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掬光庵わずかな光を掬いとる漆黒の空間

かつての民家には闇があった。現代の住まいから闇が消え去って久しいが、古来、人は闇に畏れを抱きながらも闇と共に暮らしてきた。現代人は闇の全てを消し去り、光に満たされた明るい住まいを手にしたが、同時に静寂に包まれた落ち着いた空間を失ってしまった。そろそろ静寂を住まいに取り戻してもよい頃ではないか。「掬光庵」は漆黒の闇に包まれた、建主の強い個性が表れた住宅である。禁欲的なまでに外からの光を抑え、仕上げから小物に至るまで全てを黒に統一した闇の中で、抑制されたわずかな光を掬いとり、素材や艶によって異なる表情をつくりだす。闇の中に開けられた小さな窓から見える景色は、強く鮮明な印象を与え、四季の移り変わりを強く意識させる。

新建築住宅特集2017年6月号

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