成城の家Ⅰ
敷地の北には道路を挟んで緑生い茂る公園が広がり、南には私道の先にやや密集した住宅街が続く。公園に大きく開いた北側の空間は、その濃密な緑が映える「黒の世界」とする一方で、南側も同様に大きく開き、レース越しに直射日光がさんさんと差し込む明るく健康的な「白の世界」としている。 しかし、光のあたり方、とどき方により「白い世界」には陰影が生まれ、「黒い世界」はその艶の加減により眩しく輝く。仮にカメラで撮影すると、前者は白い壁紙が黒く写り、後者は黒い壁紙がハレーションで白く写る。実際の仕上げの色が明確に白黒と分かれた単純な空間であっても、季節、時間による光によってその見え方は刻々と変化するだけでなく、立つ位置、見る角度によっても変わり、一年を通して様々な表情を見せる。そして「白の世界」と「黒の世界」を仕切る壁は、3層それぞれ開口の開け方を変え、光の交わり方にさらに変化を加えている。 対照的な二つの景色をもつ敷地に明確な二つの世界をつくりながらも、それぞれの世界だけに留まらない表情豊かな内部空間となっている。