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「隅」空間を広く感じさせる試み

狭小住宅では常に少しでも広く感じられるようにという要望がつきまとう。このプロジェクトでは、「開口」と「素材」「光」に着目し、その課題への回答を試みた。内部は、滞在時間が長いリビングを建物の中心に据え、東にダイニング、北にキッチン、南に子供部屋、そして西にTVを置くスペースを配し、上階にはゲストルーム、下階にはエントランスへつながる空間構成とした。最大ボリュームを確保した一番外側の壁面まで見通せる、つまり、距離を感じさせる=広さを感じさせる「大きな部屋」を作ることが一つ目の操作である。もう一つの操作は、自分がいるスペースとは別にもう一つのスペースがある、さらにその先にも空間が広がっていると感じさせること、つまり、「部屋数」を多くするということである。この二つの方法を共存させ、存在しない四隅をも感じさせる住宅である。 1.あいまいな境界 「部屋数」と「大きな部屋」、この二つを限られた狭いスペースで共存させ、広さを感じさせることができないか?ワンルーム空間にも見え、個室の連なりにも見えるような境界の在り方、仕切られているようで、繋がっているような「開口」の在り方を考えた。 2.いろいろな壁 「部屋数」と「大きな部屋」を感じられる試みとして、壁面や天井面を同じ色の中で「素材」を使い分けている。建物の中心であるリビングはザラザラとした左官の壁として他のスペースと区別し、一室空間でないことを強調する。一方で、外周部の内壁や天井面は同色の平滑な壁面として素材を変えることで奥行きを感じさせ、室内の大きさを認識させる。 3.うつろう空間 一日の太陽の動きだけでなく、季節や天候によっても内部に差し込む光は変化し、夜は照明のパターンや強さによって空間の感じ方が変わる。「部屋数」と「大きな部屋」といった狭小住宅では共存の難しいものがゆらゆらとその時々で現れる。この時間軸を伴った空間の在り方こそがこの住宅の最大の特徴であり、「広さ」を感じさせる新しい提案である。

日経アーキテクチュア2020-6

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