特別公開された山口文象が設計した「林芙美子邸」の見学に行ってきました。
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中井駅で降りて神田川を渡って北へしばらく歩くと、
南斜面の坂を登り初めてすぐところに「林芙美子邸」の門があります。
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門を抜けて竹林の坂を少し登ると・・・
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玄関が見えてきます。素晴らしいアプローチですね。
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玄関の扉を開けると、、、上がり框がある一般的な玄関ではなく、
手前に靴脱ぎ石が置かれた少し高いところに「取次の間」が正面にあります。
「取次の間」は2畳のスペースですが、3枚の細長い小さな畳が敷かれています。
障子も通常だと2枚のところを3枚とすることで、広く見せているとのこと。
この玄関もそうですが、茶室の要素が家全体に散りばめられています。
林芙美子は茶の湯の世界にとても興味を持っていたので、
大徳寺のお坊さんに色々相談しながら、作ったようです。
ここを右に曲がると客間で・・・
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左の奥にも靴脱ぎ石がありますが、そちらはプライベートな空間。
あるいは親しい方を通す動線が確保されています。
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出版社の方などが通された客間。小さながらも落ちく部屋ですね。
ここならしばらく待たされてもいいですね(笑)。
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親しい人は、日当たりの良いこちらの茶の間に通されたそうです。
この部屋は家の中心にあって、廊下がぐるりと回っています。
そして、あちら側に見えるのはアトリ棟。
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実は左のアトリエ棟と右が生活棟に別れています。
竣工が1941年、建坪の制限あったため、60坪を30坪づつの分棟にしたそうです。
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こちらは竣工当時は書斎として使われていたのですが、
日当たりが良すぎるということで、隣の小さな納戸スペースが書斎に。
茶室や小間ではよくある下がり天井を大きな部屋で使っていたり、
2階ではよくある闌干があったり、、、
よく見ると普通ではないですが、それが良い雰囲気を醸し出しているのだと思います。
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その書斎の後ろを振り向くとこんな風景が。
どことなく忘筌に似ていますが、、、やはり忘筌を参考にしているとのこと。
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一見、古くさい(?)普通の住宅にも見えなくもないですが、
よく観察すると機能的な設備や平面計画など、随所に近代のセンスも感じられます。
時代を遡って見学する現代人にとっては、
逆に古いものが新鮮に見えるので、気づきも多いですね。