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コラム2/敷地の「ソト」に価値がある 

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 「家に帰ってほっとしたい」、「週末は家でゆっくり過ごしたい」という言葉が表すように、「家」という言葉にはプライベートな印象があります。そのためか、どうしても視点や発想が内向きで、家の設計を依頼する建主の多くは要望が家の中に集中しがちで、街に対する建ち方にはあまり関心がないように思います。要望をそのままかたちにしてしまうような設計者がいるとしますと、その設計者にも責任がありますが、その結果として、今の日本の街並みが出来上がっているように思います。個人の所有物である家は自由に建てることができますが、街をかたちづくる一部であることも忘れずに、その佇まいを大切に考えるべきだと思います。
 私たちが建主から設計を依頼された時は、まず、敷地境界の外側をよく観察するようにしています。敷地の周辺にどのような建物がどんな大きさでどのぐらいの密度で建っているのか、隣接して緑はあるのか、遠くに山は見えるか、並木が見えるか、畑が広がっているかなど、敷地の形や大きさ以上に周辺環境は建物を計画する際に大きな影響を与えます。また、敷地が都心の密集地か、郊外の住宅地か、あるいは別荘地かによっても建ち方は違ってきます。その結果、周辺環境に馴染ませるもよし、反対に主張するのもよいでしょう。何れにしても、その敷地だからこその魅力的な佇まいをつくるべきです。周辺環境のプラス要素は最大限活かすべきですし、マイナス要素があるならば、よく観察して解決していくべきです。建主の個別の要望ではなく、敷地の特性を把握して、その場所から導き出されるそこにあるべくしてある建築は例え住み手や用途が変わっても、そこにあり続けるものとなるでしょう。
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