近代建築の巨匠、ミース・ファン・デル・ローエの言葉に「God is in the details/神は細部に宿る」というものがあります。美しさと機能の追求はディテールの追求であるという解釈になりますが、細部までこだわり抜いた空間に実際に身をおくと、濃密で引き締まった空気を感じます。
ミースが言いたかった正確なところはさておき、建築家はコンセプトにもとづく意匠だけでなく、住み手の様々な住まい方を想像して、「安全性」「快適さ」「使いやすさ」などにも気を配りつつ、如何に美しく設えるかを考え詳細をつめていきます。落下防止という目的ひとつとっても、機能を満たしながらも機能を感じさせない、さりげない手すりをデザインするなどはよい例です。何気なく感じる空間であっても、そこには実にたくさんの凝縮された工夫があるのです。細部まで緻密に考えながらも、それを感じさせないデザイン。そこではじめて上質な空間が得られるのです。