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コラム10/「暮らし」に息づく趣向

 設計者はどこまで住み手の暮らし方を想定して、細かいところまでつくり込むべきなのでしょうか?「住宅は“建主”のモノなので、あまりつくり込まずにシンプルな箱をつくり、引渡し後に“建主”が家を完成させていくべきです。」という声が時々聞こえてきますが、本当にそれでよいのでしょうか?建築家として住宅を設計するのであれば、それでは少し役不足なような気もします。確かに住み手の住み方によって空間はより素晴らしいものになりますし、建築家の自己満足でしかないプランより、シンプルな箱の方が空間に可能性がある場合もありますが、敷地から家具までシームレスにデザインするからこそできる空間もあります。建築家は住み手の5年後、10年後、あるいは住み手が変わった50年後をイメージしながら、どこまでつくり込むかの加減を見極めなければなりません。もちろん、イメージしたとおりに住み手は使わないかもしれませんが、様々なシーンを想定すること自体が大切で、その予想を遥かに超えて住み手が住みこなしていく可能性を持たせるべきだと思っています。
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