「杉戸のリノベーション」が竣工しました。禅寺の庫裏のハナレのリノベーションで、瓦屋根の佇まいを残しつつ、内部は現代的に刷新しました。
利根川の江戸川への分岐からやや下流の土手沿いに建つ禅寺。時代とともに寺院のあり方、家族構成なども変わり、建替えの時期を改めて迎えていました。客殿、庫裏は先代、先先代の住職の思い入れある建物であり、重厚感のある瓦屋根の連なりは何ものにも代え難い景色となっているため、建替えではなく骨格を残すリノベーションで進めることにしました。ただ、この連なりの中にもやや異質なものが混じっており、一部解体を含め、違うアプローチを試みようと考えました。
今回の一期工事は、本堂からみて末端の1960年代以降に増築されたエリアを、子世帯が住む庫裡別棟としてつくりかえるリノベーション。もともと親世帯が住む庫裏とは別棟になっていましたが、公私が混在する動線を整理すること、四季折々の長閑な土手の風景も取り込む全方向に開放的なプランにすること、玄関から連続する土間空間を中心とした立体的な魅力を加えることなど、既存建物の佇まいをそのままに生まれ変わりました。
エントランスは土間のダイニングと一体となっています。
ダイニングからリビングを見るとこのような感じです。
リビングは床レベルより一段落として、天井を高くしています。
ベッドルームから土手が見えます。
連なりの最南東の突端、最も直近に増築された屋根の傾斜が他の棟と異なる2階建ての建屋は、規模を縮小すべく一時は取り壊すことも考えましたが、切り離して離れとし、テントで覆われた簡易かつ趣の違うものとしました。他とは全く異なる佇まいと室内空間は、増築を繰り返した20世紀、減築により新しく生まれ変わっていく21世紀、その分岐点の象徴です。
夜になるとテント越しに光が漏れ、行燈のように闇夜に浮かび上がります。