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TIME TRAVEL 1 ・サハラ_1993

学生時代に撮った30年前のポジフィルムをデジタル化。その写真をアップロードして時間遡行する記事の第一弾はサハラ砂漠。印象に残る旅先の風景の一番を選ぶのは難しいですが、緑と四季の変化が美しい日本で生まれ育った日本人にとって、緑も水もなく生物が全くいない無音の砂漠はかなりの衝撃でした。
モロッコを旅行するのは今でこそ珍しいことではないとは思いますが、30年ほど前はまだ情報が少ない未知なる世界。東大の研究室などがすでに世界中の集落調査をしていたのでアルジェリアやモロッコなどのサハラ以北の国々の情報もわずかながら入ってきていましたが、周りにはサハラに行ったことがある人はいなくて、「カサブランカ」や「シェルタリングスカイ」といった映画などで、モロッコに行ってみたいという欲望が湧いてきました。
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ただ、アフリカ大陸にいきなり飛行機で降り立っても盛り上がりに欠けるので、、、、緑と水の豊かなスコットランドから南下して、フランス、ポルトガル、スペインを経由した後、ジブラルタル海峡を船で渡ることにしました。コルドバ、グラナダあたりはすでにイスラムの影響を強く受けていましたが、海を渡ったタンジェという港町についた瞬間、これまでに経験したことがない別世界が広がっていました。イスラム独特の強烈な熱気と写真では表現できない喧騒と匂い、前の年に行ったトルコとはまた違ったかなり怪しげな街でした。タンジェに夕方に着いてしまったというのもそもそも大きな失敗だったのかもしれませんが、アンダルシアの長閑な雰囲気から一変、船から降りるや否や四方八方からバックと手を大勢の客引きに引っ張られ、、、、それを振り張って、夜行列車に飛び乗りこの街を脱出しました。東洋人はもちろん、ノー天気な西洋人の観光客もほとんどいない、かなり怪しげな雰囲気が漂っていました。後から現地のJAICAの方から聞いたのですが、ちょうどその日もJAICA職員が襲われたとのことで犯罪の多い町だったようです。。。
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翌朝、マラケシュという大きな町に着きました。タンジェに比べると幾分落ち着いた町でしたが、そこも驚きと不安で一杯になる刺激的なところでした(笑)。マラケシュはモロッコ有数の観光地なので欧米のツアー客も大勢いて、タンジェに比べると恐怖を感じることもないのですが、バザールで一人になった瞬間、一眼レフで写真を撮るのは少々物騒な雰囲気はありました。あまりのんびり観光しなかったので、また是非行ってみたい町の一つです。
ここまでは(そこから先もですが・・・)全くノープランで来たのですが、たまたま町中で日本人数人を見かけ、僕が運転するのでレンタカーを割り勘で借りないかと誘って、サハラ砂漠に一緒に行くことになりました。。。
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借りたのはオンボロのルノーで少々心もとなかったのですが、なんとかアトラス山脈を超えて、少しずつ砂漠に近づいてきたような風景になってきました。
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アトラス山脈の南、土漠を東西に横断するカスバ街道。まっすぐの道をひたすら東に走ります。
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車で数時間走るとオアシスがあって、そこに緑と水があるので集落があるという感じです。そこで休憩しながらそんな集落に泊まりました。情報があまりないので、常に行き当たりばったりです。。。きちんとした地図もなく、カーナビも携帯もなかったのにどうやって旅行したのかよく分かりませんね。。。
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土漠を南下すると少しずつ砂が混じったエリアになって行きます。さらに南下すると砂の割合が増えていき、僕では運転が難しくなり、途中で道案内を雇って、最終的には運転も変わってもらってパリダカラリーのような感じになりました。不思議と(?)砂で埋まるところにチップ目当ての男たちが待機していて車の後ろを押してもらう、、、それを繰り返しながら、、、、
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ついに砂漠に到着!歩いて砂の山も越えるとこの風景です!
そこには風の音だけが聞こえる今まで体感したことがない世界が広がっています。緑も水もない世界は日本人にとっては衝撃でした。鳥も虫の音も聞こえないないのですから・・・・。夕方、日没してどんどん暗くってくると、背筋が凍りつく感じになってきました。ここで砂に埋められてしまったらこの世から自分が消されてしまうというような恐怖感も感じたのか?単に自然の美しさに感動したのか分かりません。その時が今までで一番、自然を強烈に感じた瞬間でした。
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その後、北上して地中海沿岸に戻って、フェズといった美しい町をいくつか街を訪れました。カサブランカにもいきましたが、すでにガラス張りの高層ビルが建ち並ぶ近代都市で、フェズこそがまさに映画「カサブランカ」のイメージ通りの町でした。
モロッコではレンタカーだけでなく、ヒッチハイクもしながら移動しました。今、思えば非常に危険なことをしたように思いますが、平和な時代だったのですね。ロードムービーでヒッチハイクするシーンは見慣れていたので、あまり抵抗がなかったような気がします。勿論、大丈夫そうな人に頼んで乗せてもらっていましたが・・・・
ちなみに、、、砂漠のように人がつくったものがない神ががった美しさは、海の中、雲海に浮かぶ山々でも大きな感動をした経験があります。私たち人間が作り出すものは、所詮、自然界の美しさを越えられないと感じました。そして、そのMoutain、Desert、Sea の3つの頭文字をとったのがMDSの語源とか?そうでないとか??

TIME TRAVEL・風景の一部になっていた箱の中身

先日、スペインの建築家リカルド・ボフィール訃報のニュースがありましたね。30年ほど前にスペインの彼のオフィスまでわざわざ見学に行ったのを懐かしく思い、すっかり本棚の見慣れた風景になっているポジフィルの入った箱を久しぶりに開けてみると、、、、タイムスリップしてしまいました。
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コンクリート工場をコンバージョンしたリカルド・ボフィールのオフィス。
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確かバルセロナ?の郊外で公共交通機関がなくてかなりの距離をひたすら歩いたような記憶があります。この頃はインターネットなどは勿論なくて、道端の人に聞いて教えてもらった方向に歩き、そしてそれが間違っていて、、、、とそれの繰り返し。とても大変でしたが、その途中でいろんな発見がありました。
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今となっては日本でも古いものを生かすことや緑に囲まれた郊外のオフィスなど、だいぶ一般的になってきましたが、これが30年以上前ですからねー。素晴らしいですね。
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こちらはパリ郊外のボフィールが設計した集合住宅。
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こちらは近未来映画の未来世紀ブラジルにも使われた集合住宅です。絵になる共用空間ですね。。。この自転車に乗った子供たちと仲良くなって、家の中に入れてもらえないかと親に頼んでもらい、めでたく中に入ることができました(笑)。その頃、世界中は良い方向に向かっていたからか、あるいは日本人が珍しくイメージも良かったからか、ここに限らず調査、見学と言って建築学科の若者の特権?で、あちらこちらに入れてもらえました。今の若者もそんな特権は使えるのかなあ?
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30年ほど前の建築学科の学生はポジフィルムで写真を撮ることはそれほど珍しいことではなく、いつでもスライド上映できるようにしてありました。学生の時だけでも、アメリカ、メキシコ、韓国、香港、中国、マレーシア、インド、ロシア、トルコ、東西のヨーロッパ、モロッコなどを旅行したので、膨大な写真があります。今とは全く違った世界各国の写真もあって、このままお蔵入りしているのも少々勿体無いような?まさかこんなデジタルの時代になるとは、当時は全く思ってもいなかったですね。。。
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こちらはRIAのテロ直後、ロンドンのシティ。その頃の日本はテロとは無縁の平和な?バブルでしたから、、かなりの衝撃を受けました。シティ全体がこんな感じだったのに、このビルの目の前のリチャード・ロジャースが設計したロイズ・オブ・ロンドンはなぜか無傷でした。
この他にも大学の研究室のみんなと行った中国の水郷集落の調査、今のように発展する前のインドや中国の風景、ヒッチハイクとレンタカーでアトラス山脈を越えてサハラ砂漠に行った時の写真などなど、面白い写真はたくさんあります。
例年、この時期は大学の卒業設計の講評会と海外旅行という感じでしたが、今年もまだ海外には行けませんね。こちらのブログはもともと旅行ネタが多いので、コロナ禍ではどうしても更新頻度は下がってしまいますね。ということで、今後そんな写真をアップしていこうと思います。

卒業設計講評会@日本大学

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日本大学生産工学部の卒業設計講評会に行ってきました。例年通り、午前中の1次審査では展示されていている作品から各先生が8作品選び、午後の2時審査では票数の多かった学生が発表します。
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今年も発表者はzoomで参加。先生も半数がオンライン参加で、いまひとつ盛り上がりに欠ける講評会でした。
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こちらが一等の谷口真寛くんの作品。力作の模型です。本来なら本人が模型を使って説明すると、一層良さが伝ってきたと思います。色々と考えさせられる講評会でした。

「成城の家II」祝!竣工

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成城の家 Ⅱが竣工しました。
閑静な高級住宅街で知られる東京郊外の成城。周辺は緑が多く、区画の大きい住宅が多い一角であるが、敷地分割された計画地は間口が限られ、建蔽率、容積率ともに余裕はない。しかし隣地との関係を丁寧に読み解くことで、プライバシーを確保しながら隣地の緑を借景とし、自然を感じられる伸びやかな空間となっている。1階は水回りと個室群で、リモートワーク時代の住宅らしく家族各々が個室を構え、仕事場として将来外部との接点としても活用される個室を玄関より手前に設けている。2階は中庭を中心にリビングとダイニングキッチンを分け、高低差や平面方向のズレを活かし、日当たり良く、内外を連続させつつ程よい距離感を持たせた家族団欒の場が生まれている。
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祝!重版出来

先月発売されたMDSの本「暮らしの空間デザイン手帖(改訂版)」が重版出来とのこと。発売から1ヶ月で重版となることが、正直、どういうことなのかよくわかっていないのですが、大変喜ばしいことのようです。皆様、どうも有難うございます。今回は大幅に改訂した新刊のような改訂版ということで、やや微妙な立ち位置のものですが、ひとまず安心。

「鎌倉浄明寺の家」が雑誌「I'm home.」で記事に

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新年早々発売のI’m home.の最新号は、くつろぎのプライベート空間の特集。MDSが設計した鎌倉浄明寺の家が紹介されています。
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鎌倉浄明寺の家はワンルームの一角をオープンなベッドルームにした事例として紹介されています。こちらの住宅は毎号、何かしらの記事で再掲されているような印象ですが、、、、このベッドスペース、今はギャラリー!ギャラリーとして利用されている状況は、ウェブマガジン100%LIFEで詳しく紹介されています。

KPFの旧友帰国

KPFの勝野氏と久しぶりに会いました。KPFは、六本木ヒルズ、上海環球金融中心(上海ワールド・フィナンシャル・センター)など、誰もが知っているランドマーク的な超高層をたくさんデザインしていることで知られるNYの世界的に有名な建築設計事務所。勝野氏とは僕が大成建設に入社したばかりの頃、配属された名古屋支店で一緒に仕事をしていた旧友です。当時ならではありますが、毎日のように深夜から夜明けまで、打ち合わせをして・・・・といった昼夜関係なしの日々を送っていた頃を懐かしく思います。その後、僕は本社配属になって東京に戻ったのですが、彼はNYへ。その後、いろいろ苦労はしたようですが、KPFに入って今やアジア地区の超高層ビルをデザインする中心的存在にまでなっています。ご立派です!帰国する度に会っていましたが、コロナ禍ということで今回は数年ぶり。ですが、、、、想像通り、帰国便の飛行機で感染者がいて2週間隔離となってしまって、ようやく自由の身になったとのこと。本当に今は国境を越えるのは大変ですね。
それはさておき、昨年、勝野氏からKPFに興味のある優秀な学生を紹介して欲しいとの相談があって、理科大岩岡研究室の横山くんを紹介しました。今、NYでバリバリ頑張っているようです。そんな話もあって、岩岡先生のご自宅兼アトリエの乃木坂ハウスへ。岩岡先生も交えて、ニューヨークや超高層のデザインなどの楽しい話をしているうちに、岩岡先生がフランスから機内持ち込みで持ち帰った美味しいワインを何本も空けてしまいました。申し訳ありませんでした!有難うございます。
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新しいMDSの本をプレゼントして記念撮影。
こちらのプログを見た学生諸君、ニューヨークでぜひとも働きたいと思っている人は連絡ください。勝野氏に紹介します!

Season's Greetings 2021→2022

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本年も格別のご高配にあずかり、誠にありがとうございました。来る2022年の皆様のご健勝とご多幸を祈念するとともに、今後とも変わらぬご厚情を賜りますようお願い申し上げます。どうぞ穏やかな新年をお迎えください。
※MDSは12月25日(土)から1月5日(火)までを休業とさせていただきます。