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群馬県立近代美術館

翌日は同じ高崎市内にある群馬県立近代美術館へ。
磯崎新氏設計の1974年竣工の美術館です。
当日の企画展は『司修のえものがたり―絵画原画の世界』。
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多くの人の記憶に残っている絵本や物語で描かれた絵の原画です。
絵をみて思い出す方も多いのではないでしょうか。
物語の世界観を絵で伝えるという情熱が、とてもよく伝わってくる企画展でした。
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群馬音楽センター

同じく、アントニン・レーモンド設計の群馬音楽センター。
鉄筋コンクリートによる折板構造という特徴ある構造が美しくわかりやすい。
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稜線のシャープさに目を奪われますが、
雨水処理の仕方がこれまた興味深い。
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その構造とコンクリートの力強さが内部にも表われてます。
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2階ホワイエ。
当時のスチール製カーテンウォールのディテールにくすぐられます。
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全景が撮れないので模型で。

旧井上房一郎邸

次は旧井上房一郎邸を目指して高崎へ。
ここで間違いないと思って車を降りたものの、
門扉は堅く閉ざされ、入口を探してぐるりと一周したところ、
旧井上邸の敷地の一角、高崎市美術館がその入口であることを発見。
旧井上房一郎邸とは、東京・麻布にあった
建築家アントニン・レーモンドの自宅兼事務所に強く感銘を受けた井上氏が、
レーモンドの快諾のもと図面の提供を受け、大工に実測させて再現した建物で、
レーモンドの建築スタイルがよく表われた建築として知られています。
井上房一郎氏とは高崎の実業家で、高崎の文化活動に尽力した人物。
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居間。柱芯と開口部芯をずらした「芯外し」の手法により
窓を大きく開け放し、庭との一体感がつくられています。
自然に対抗した西洋の建築に対し、レーモンドが日本に学んだ、
四季と共にある建築の在り方が表現されています。
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屋根を支える「鋏状トラス」
杉の足場丸太材を使って、柱や登り梁を二つ割の丸太で挟み込んでいます。
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居間見上げ。障子のはめ込まれた高窓から北側の自然光が入ります。
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廊下と居間との間仕切りは襖となっています。
開け閉めすることで、違うシーンがつくり出されます。
飴色に艶めいた丸太材の屋根架構が美しい。
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寝室。パティオを挟んで居間の向かいにあります。
図面には「ソファベッド」とあったので、
右のソファがベッドになるのでしょうか?
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和室。元になったレーモンドの自宅にはなかったものだそうですが、
井上氏がご夫人のためにつくられたものだそうです。
和室の向こうにあるのは前室。
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パティオ。この住宅の中心に位置しています。
レーモンドの自宅と旧井上邸との違いは、前掲の和室の他に、
このパティオに対してプランが反転している点です。
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庭に伸びる深く美しい軒
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「居間」で寛ぐ皆の衆。
建築資材が高価で不足がちな戦後まもない時期、
簡易さと経済性を求められた結果、生み出された「レーモンド・スタイル」。
その時代に真剣に向き合って生まれた名作(写しですが・・・)を体感し、
今の時代をどう捉え、建築をつくっていくかを考えさせられるひとときでした。
余談ですが、高崎市美術館では当日、
岩合光昭写真展 ねこ -真っすぐに生きてる- を開催中!
以前、東京で見逃した写真展で、まさかこんなところで巡り会うとは
思ってもいませんでした。ああ嬉しい。

富岡製糸場

6月ですが、GWの話をしたいと思います。
( ↑ いつも振り返ってばかりですが・・・)
事務所一同で群馬建築ツアーに行ってきました。
勝手にツアーと呼んでるだけで、自前ツアーです。
まずは富岡製糸場
日本の産業遺産として、世界遺産への登録を目指す製糸場跡です。
富岡製糸場の歴史は他をご参照いただくとして・・・
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建物は木骨レンガ造という特殊な工法で、
柱・梁を木軸とし、壁にレンガを積み上げた構造となっています。
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突貫工事だったため、その後の材の乾燥収縮が激しく、
柱・梁間に隙間が生じているのがわかります。
それでも柱・梁とレンガ壁との間に隙間がないのは、木軸にしゃくりを入れ、
レンガ壁をそれに差し込むように施工しているためだそうで、
突貫の中にも試行錯誤された過程がうかがい知れます。
レンガは通常モルタルを使って積まれますが、当時はモルタルがなかったため、
地元の石灰を原料とする漆喰で積まれたそうです。
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前掲は繭を保管しておく倉庫ですが、こちらは繭から糸を紡ぐ作業場です。
作業には繭を茹でる工程があるため、場内は蒸気でいっぱいになるそうで、
建物の上部に換気を促す換気棟がつくられています。
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こちらが作業場内。当時は照明がなかったため、
とにかく窓を大きく、そして場内は白く塗られたそうです。
特筆すべきが屋根を支えるこの小屋組み。
この小屋組みのために柱のない大空間が実現しました。
大勢の工女たちが一斉に器械に向かい、作業に一心する様子が目に浮かびます。

「深沢の家」引渡し

震災による資材調達の影響をほとんど受けることなく、
無事に「深沢の家」の引渡しを迎えることができました。
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下記のCGとほぼ同じアングル。
予想通りの空間が出来上がりました。
近日中に、私が撮った写真をアップする予定です。

日本建築学会 建築設計資料集成に「たまらん坂の家」掲載

日本建築学会が編集する「建築設計資料集成」という本があります。
大学で建築学を専攻する人が、必ず一度は目にする本です。
そのコンパクト版が「コンパクト建築設計資料集成」。
そして、このほどそのインテリア篇が出版され、
私たちが設計した「たまらん坂の家」がそこに掲載されました。
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たまらん坂の家」が掲載されているページには、
「バラガン自邸」、篠原一男の「白の家」、
伊東豊雄の「中野本町の家」歴史に残る名作がずらり。
とっても光栄なことです。