次は旧井上房一郎邸を目指して高崎へ。
ここで間違いないと思って車を降りたものの、
門扉は堅く閉ざされ、入口を探してぐるりと一周したところ、
旧井上邸の敷地の一角、高崎市美術館がその入口であることを発見。
旧井上房一郎邸とは、東京・麻布にあった
建築家アントニン・レーモンドの自宅兼事務所に強く感銘を受けた井上氏が、
レーモンドの快諾のもと図面の提供を受け、大工に実測させて再現した建物で、
レーモンドの建築スタイルがよく表われた建築として知られています。
井上房一郎氏とは高崎の実業家で、高崎の文化活動に尽力した人物。
居間。柱芯と開口部芯をずらした「芯外し」の手法により
窓を大きく開け放し、庭との一体感がつくられています。
自然に対抗した西洋の建築に対し、レーモンドが日本に学んだ、
四季と共にある建築の在り方が表現されています。
屋根を支える「鋏状トラス」
杉の足場丸太材を使って、柱や登り梁を二つ割の丸太で挟み込んでいます。
居間見上げ。障子のはめ込まれた高窓から北側の自然光が入ります。
廊下と居間との間仕切りは襖となっています。
開け閉めすることで、違うシーンがつくり出されます。
飴色に艶めいた丸太材の屋根架構が美しい。
寝室。パティオを挟んで居間の向かいにあります。
図面には「ソファベッド」とあったので、
右のソファがベッドになるのでしょうか?
和室。元になったレーモンドの自宅にはなかったものだそうですが、
井上氏がご夫人のためにつくられたものだそうです。
和室の向こうにあるのは前室。
パティオ。この住宅の中心に位置しています。
レーモンドの自宅と旧井上邸との違いは、前掲の和室の他に、
このパティオに対してプランが反転している点です。
庭に伸びる深く美しい軒
「居間」で寛ぐ皆の衆。
建築資材が高価で不足がちな戦後まもない時期、
簡易さと経済性を求められた結果、生み出された「レーモンド・スタイル」。
その時代に真剣に向き合って生まれた名作(写しですが・・・)を体感し、
今の時代をどう捉え、建築をつくっていくかを考えさせられるひとときでした。
余談ですが、高崎市美術館では当日、
岩合光昭写真展 ねこ -真っすぐに生きてる- を開催中!
以前、東京で見逃した写真展で、まさかこんなところで巡り会うとは
思ってもいませんでした。ああ嬉しい。
旧井上房一郎邸
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