• Archive

和泉正敏氏の自邸

今回の四国はそもそも建築家協会関連で行くことなったのですが、
個人的に特に行きたかったのは、
和泉正敏氏の自邸と山本長水氏の「かたつむり山荘」。
集合して、まず、ジョージナカシマ記念館に行った後、
そもそも和泉石材の中にイサム・ノグチの工房があって、
そこが今はそのまま美術館になっています。
そこには民家を移築して、
改装したイサム・ノグチの家もあるのですが、
残念ながら撮影は不可なので、こちらの本を
s-iasamu .jpg
この撮影不可の家に泊まったことがあるというのが、、、佐藤由巳子さん。
JIA建築セミナーのまとめ役をやられている佐藤さんは、
イサム・ノグチがまだ存命の頃(つまり、美術館になるずう〜っと前)、
ジョージ・ナカシマの本、木のこころを翻訳中、こちらの2階に泊まったとか。
佐藤さんは和泉正敏さんとその頃からの知り合いということで、
和泉さんのご自宅を特別に拝見させていただくことができました。
和泉正敏ご本人にお会いしてご案内していただきお話をさせていただきました。
ただブログ等の掲載は控えて欲しいとのことで・・・
こちらの本、JAPAN LIVINGに掲載されています。
japan living.jpg
ちなみに、MDSの目白の家こちらの本に掲載されています。
IZUMIYA_01.jpg
和泉さんは石工なので、建築家の山本忠司さんとの共作。
この家の特徴である石はコツコツご自分で積み、
両側の石の真ん中にコンクリートを流し込んでいるとのこと。
現法規では成立しませんが、キチンと建っていますね。
リビングや和室といった見せ場大きな石が積まれていて、
壁というよりは強烈なアート作品です。
適材適所に石の表情を変えて空間を分節して、
スチールのトラスで作られた軽やかな屋根が、
その全体を覆うシンプルな構成。
以前から訪れて見たかった念願の空間を体感できて感無量です。

秋のうどん県

うどん県と言って売り込む香川県。
勿論、うどんも美味しいですが、名建築もたくさんあります。
ということで、紅葉真っ盛りの香川県へ。
s-IMG_3632.jpg
早朝、羽田空港を発って香川空港へ。
レンタカーで最初に向かったのは、琴平町のこんぴら歌舞伎
旧金毘羅大芝居は1835年に建てられた現存する日本最古の芝居小屋として有名で、
舞台裏の隅々まで見学ができます。
一時はかなり荒れていたようですが、今は元の姿に修復されています。
その歴史についての詳細はコチラ
s-IMG_3614.jpg
枡席には昔は4人座っていたそうで、かなり狭いです。
今はひとつおきに間仕切りをとり、二枡に5人座るそうです。
昔は舞台に向かって右の2階の看板下が身分の高い人の席だったそうなのですが、
それは建物に入る入り口と深い関係あるようです。
建物の入り口は3つあって、右手が貴賓口でそのまま2階に上がったからで、
ちなみに、真ん中の躙り口は庶民の入り口で、左側はその中間とのこと。
他にも興味深い話が一杯ありますが、長くなるので・・・・・
s-IMG_3662a.jpg
「こんぴらさん」とは海の神様、金刀比羅宮(ことひらぐう)のこと。
琴平に来たのはこんぴら歌舞伎を見学するのが目的ではありましたが、、、
快晴で紅葉も奇麗なので、参道の階段を登って金刀比羅宮へ向かいました。
s-IMG_3649.jpg
象頭山の中腹の金刀比羅宮からの讃岐の風景。
特徴的なカタチをした讃岐富士と遠くには瀬戸大橋が眺めれます。
海が見えるということは、海から象のカタチをしたこの山はよく見え、
金刀比羅宮は象の目のあたりだそうです。。。。
ところで、讃岐富士や象頭山といった不思議なカタチをした山は、
雨の少ないこの地域で、固い安山岩と柔らかい花崗岩が浸食する過程で出来たとか。
この後、向かったのは坂出人工土地。
ドコモモにも選定されているなかなか良い団地でしたが、
地方都市の荒廃ぶりは本当に深刻です。。。
s-IMG_3701.jpg
そして、山本忠司設計の瀬戸内海民族資料博物館へ。
「日本建築学会賞」を受賞した1973年竣工の作品ですが、
知らない人も多いのではないでしょうか?
僕も知り合いの方から薦められてこの建物を知り、はじめての訪問。
s-IMG_3728.jpg
石積みと杉板型枠コンクリートの建物が斜面に沿って分棟配置されています。
内外が曖昧な空間を庭を見ながら少しずつ上がって、
自然な流れで最後に最も高い屋上へ行くという動線計画。
s-IMG_3719a.jpg
屋上からは瀬戸内海に浮かぶ島々が一望できます。
夕方になって雲が多くなり、ちょっとどんよりした雰囲気なのが少し残念。
IMG_4155s.jpeg
そして、日が沈むギリギリに高松市内の香川県立体育館へ。
今は使われていない丹下健三設計のとてもダイナミックな建築です。
丹下さんと言えば、代々木体育館。
そちらは世界遺産登録に向けた動きがあるようですが、
こちらの体育も取り壊されることなく残っていて欲しいですね。
そして、日が沈んでから、メインディッシュの掬月亭へ。
秋は夜間拝観できるという情報を聞きつけて、、、
s-IMG_3761a.jpg
見て下さい!この風景!
あまり人気がないようでガラガラでした(笑)。
障子を開け放った状態を見たかったので(夏は障子を開け放つようです)、
その状態が見れなかったのは少し残念ですが、、、、確かに寒いです(笑)。
sIMG_3779a.jpg
あいにくの天候で月を掬うことができないと思っていたら・・・
雲の間から、一瞬、月が顔を出しました!
ライトアップの光が邪魔をして、月が水面に映っているようないないような???
はい、きちんと写っています!掬月亭で月を掬えて(?)大満足!?
s-IMG_3757a.jpg
ライトアップされた鮮やかな錦鯉と植栽が、幽玄の世界をつくり出しています。
ところで、掬月亭は栗林公園は栗林が多いわけではなく、松が多いですね。
s-IMG_3747a.jpg
他ではなかなか見れないライトアップされたこんな松も。
s-IMG_3806.jpg
公園の近くに泊まっていたので、次の日の朝も栗林公園を散策しました。
遠くに見えるのが掬月亭。夜とは違ったすがすがしい佇まいです。
以前、見学したことがあるので今回はスルーした丹下健三の高松県庁(耐震改修中)、
谷口吉生の丸亀美術館など、香川には名建築がたくさんありますね。

吉田五十八「猪股邸」

新しいプロジェクトの現調のため、成城に行ってきました。
s-IMG_3563.jpg
敷地周辺は紅葉が真っ盛り。
吉田五十八が晩年に設計した猪俣邸が成城にあることを思い出し、
天気も良いので、久しぶりに立ち寄ってみました。
s-IMG_3572.jpg
入場料を払おうと思うと、、、なんと無料なのですね。
タダで見せていただきながら言うのもなんですが、
吉田五十八の作品をタダで見れるとは・・・
100円でも入場料をとって運営に回せば良い気もします。
海外ではあり得ないことですね。
s-IMG_3584.jpg
庭の木々はちょうど紅葉は今が見頃。
s-IMG_3575.jpg
巨匠・吉田五十八の近代和風は、建築家の間では賛否両論がありますが、
いろいろと参考になるところはたくさんあると個人的には思っています。
s-IMG_3580.jpg
古き良き昭和の香りがどことなくしますね。
成城の家の現場に近いので、(タダですし・・・)帰りに毎度立寄ろうかな(笑)。

秋の鎌倉散策

「鎌倉長谷の家」のTV取材の日は天気も良く、運動不足解消の運動も兼ねて、
今設計中の鎌倉のプロジェクトの敷地までお散歩することに。
s-IMG_3529a.jpg
ゆらゆら揺れるすすきを眺めながら、敷地へ向かいます。
s-IMG_3502a.jpg
帰り道、こんなそそられる風景が見え、中に入ってみることに。
s-IMG_3493a.jpg
一条恵観山荘という国指定文化財のようで、金森宗和好みの庭園もあり、
紅葉しはじめの木々が美しく、数寄屋造りのカフェでお茶を。
一服後、報国寺へ。
s-IMG_3539a.jpg
竹林が美しい報国寺。
古都、鎌倉。ぶらぶら散歩するのもいいですね。

特別公開の三井下鴨別邸と本野精吾邸

かなりブログをサボっていましたが、
夏休みも終わり、大学も始まるということで、
夏の出来事をまとめて書いていこうと思います。。。。
京都で特別公開される建築を毎年のように見に行っていますが、
今年の夏は、旧三井家下鴨別邸と本野精吾邸が特別公開されました。
s-IMG_0855a.jpg

二つの川が交わる下鴨神社の近くに建つ3階建ての木造住宅です。
一昔前の木造の高貴な住宅を見る機会はなかなかないので、
このような機会はとても貴重ですね。
s-IMG_0828.jpg
出来たばかりの時は、庭の木はもっと低く、川と山が見渡せる絶景だったのでしょうね。
s-IMG_0893a.jpg
そして、こちらは本野精吾邸。
特別公開は今回がはじめてのようでした。
docomomoに指定されている近代建築として重要な建物。
s-IMG_0875a.jpg
今では、確認申請は下りないコンクリートブロック造ですが、
数回の大地震も乗り越え、ちゃんと建っています!
詳しくは、ここで説明するのは難しいですが、画期的な工法で出来ています。
s-IMG_0891a.jpg
勿論、防水、止水などの性能面ではかなり問題はありますが、
今、見ても斬新と思えるところあって、全く古さを感じさせないデザインです。
s-IMG_0767.jpg
こちらは数年前に出来た国立博物館。
少し離れたところにあるので(?)なかなか来れず、、、、今回がはじめて。
ザ・タニグチですね。

佐賀の近現代建築

飛行機に乗るまでのわずかな時間で、佐賀市内の建築を見学しました。
s-DSC05346.jpg
こちらは、第一工房+内田祥哉の佐賀県立博物館。
十字形のプランの展示室が浮いた、斬新かつ明快な名作。
s-DSC05347.jpg
角度を変えて見ると、かなりダイナミック!
s-DSC05154.jpg
こちらは佐賀県立図書館。こちらも内田祥哉+第一工房の設計です。
ザ・近代建築ですね。
s-DSC05377.jpg
こちらは今井兼次の大隈重信記念館
ルドルフ・シュタイナーのゲーテアヌムを彷彿させる建築です。
これらの建築を足早にまわりましたが、
モダニズムとその限界を感じてその先に行こうと試行錯誤するその時代の空気感を、
足早に廻ったからこそ、むしろ感じとることができたように思いました。

ドリアンと漏斗

佐賀は正直、やや地味な印象がありますが(すみません!)
奇抜なデザインの建築がいくつかあります。
s-DSC05135.jpg
こちらは坂倉準三が設計した体育館。
平面は楕円にイガイガがついたドリアンのようなカタチ。
坂倉準三と言えば、ここで説明するまでもなく、ル・コルビジェの弟子であり、
上野の西洋美術館や鎌倉の神奈川県立美術館のような近代建築を設計した巨匠。
コルビジェがロンシャン教会を設計したように、
坂倉も造形的な奇抜なデザインをしたかったのか???
大いなる期待を抱き、中に入ったのですが・・・・
残念ながら、内部空間からは、訴えかけるものは・・・
s-DSC05153.jpg
そして、外に出て、正体して全景の写真を撮ろうとした時に、、、
何かやら、センターに気になるものが(?)。
s-DSC05155.jpg
近寄ってみると、こんなことになっていました!
屋根の雨水は、ここを流れくるのですね。素晴らしい!
是非、雨の日にもう一度来たい建物です。
実は、ここに立ち寄る前に、佐賀空港のそばの民家に立寄ったのですが、
その民家と同じ考え方なのです。
どちらも、有名な建物なのかしれませんが、勉強不足で僕は知りませんでした。
s-DSC05117.jpg
こちらが、山口家住宅。
この地域でしかほとんど見られない「漏斗造り」の民家です。
重要文化財の住宅ですが、今も山口さんがお住まいですが、
中も拝見させていただきました。
外観だけみるととりわけ特別なものにも見えませんが、、、
中に入ると、とても斬新なことになっていました。
s-DSC05118.jpg
なんと、屋根のセンターがくぼんでいて、まさに漏斗のように雨水を集め、
この大きな瓦の上を雨水が流れるとこと。
大雨の時が心配ですが、茅葺き屋根なので、雨音は聞こえず、
しみてきた水が常にチョロチョロと流れるとのことです。
s-DSC05132.jpg
そして、その雨水はこちらに!
おお素晴らしい!ここも、是非、雨の日に再訪したいです!
s-DSC05133.jpg
この「漏斗造り」の奇抜なデザイン(?)の住宅は、
坂倉準三のドリアンより遥かに昔に建ったもので、
民家は古いものとひとくくりには出来ないですね。。。
ちなみに、佐賀にはもひとつこの地特有の形式「くど造り」というのがあります。
s-DSC05331.jpg
こちらが、「くど造り」の民家。
左が国の重要文化財の川打家、右が市の重要文化財の森家。
なぜ、森家が格下なのか(?)が気になるところですが、
それはさておき、ななめから見ると二軒ではなく、四軒に見えます(笑)。
s-DSC05328.jpg
コの字型の平面を持つ不思議なカタチをした民家ですが、
なぜこのようなカタチになったのかは諸説なるようですが、
その理由はハッキリわからないとのこと。
s-DSC05323.jpg
谷になったところはこのようになっていて、
「山口家住宅」のように雨水が流れる工夫がされています。
雨水をデザインに取り入れた建築と言えば、
林昌二が設計したパレスサイド・ビル(毎日新聞社)が有名ですが、
佐賀のこれらの建物もその名作に負けていませんね。
日本は雨が多いので、雨が降った時に楽しみたいものです。
そんな気分にさせれた建物たちに、立て続けに出会いました。

川下りと鰻@柳川

「大正屋」には、佐賀空港からレンタカーで行ったのですが、
チェックインまで少し時間があるので、
空港から30分ほどの柳川にちょっと立ち寄りました。
s-DSC05081a.jpg
柳川と言えば、川下り。
ただ、川下りとは言うものの、正確にはここは川ではなくお堀。
つまり、水は一方向に流れていないそうです。知らなかった。。。
s-DSC05112.jpg
船を降りたタイミングで、雅楽の伴奏つき結婚式に向かう船団が・・・
ここの料亭にも行ってみたかったところですが、今回は時間がないのと、
大広間は今は改装中で見れないとのことのなので、また次回のお楽しみに。
s-DSC05113a.jpg
しばらく、待っていましたが、なかなかやって来ないので、望遠で(笑)
雅楽の演奏をする人たちの乗った船の後ろに、新郎新婦の船。
そして、急いで若松屋へ。花より団子ならぬ鰻です(笑)。
なんとなく、鰻と言えば、蒲焼きが食べたい気分でしたが、
やはり折角なので柳川名物「鰻のせいろ蒸し」を注文。
s-DSC05114.jpg
こちらが「鰻のせいろ蒸し」。
そして、一口食べてみると、、、、、、
予想を遥かに超えた、驚きの美味しさです。久々に感動しました!
鰻は柔らかく、そして芳ばしく美味しいのですが、下のご飯も絶品です。
ほんの2時間程の柳川でしたが、最高のひと時でした。

吉村順三の「大正屋」

久しぶりの休日、佐賀の嬉野温泉、大正屋に行ってきました。
知る人ぞ知る(?)「大正屋」は建築家・吉村順三氏の設計の旅館です。
「匠たちの名旅館」の著者である稲葉さんによると、
京都の俵屋旅館などの吉村さん設計の旅館の中で、
ここが最も設計当初の状態で残っているとのことで、
以前から、一度泊まってみたかった旅館の一つです。
早めにチェックインをして、「水晶の間」「菊の間」など、
泊まる部屋以外も拝見させていただき、離れの衆芳亭へ。
s-DSC05313.jpg
こちらが、今回泊まった離れの「衆芳亭」。
本間の他に茶室と専用庭のついた「大正屋」の中で最高峰の特別室。
二人で泊まるには、ちょっと広すぎでした(笑)。
s-DSC05275a.jpg
前室から本間越しに庭を見たところ。
s-DSC05286a.jpg
畳から一段下がったところにある座面の低い椅子に座ると、
庭と連続しつつも、畳に座った人とも同じアイレベル。。。
s-DSC05285.jpg
プライベートの庭に出て、ちょっと散策することもできます。
s-DSC05226.jpg
こちらの茶室からも、本間とは趣の違った庭の風景が眺められます。
外枠と中桟が同じ太さのいわゆる吉村障子。随所に吉村順三のディールが・・・
確かに、あちらこちらに神が宿っていました(笑)。
あちらこちらの写真を撮っていると、休む暇もなくチェックアウトの時間に。
とても、勉強になりました。

五重塔が見える景色

s-DSC04620.jpg
次の日の昼、八坂のザ・ソウドウに行きました。
数年前に一度夜に来たことがあるのですが、
今回、予約したのは2階角の個室。
DSC04605-s.jpg
そこから見える五重塔が見える景色は素晴らしく、
ちょうど雪がちらつき、まさに冬の京の風景でした。