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佐賀の近現代建築

飛行機に乗るまでのわずかな時間で、佐賀市内の建築を見学しました。
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こちらは、第一工房+内田祥哉の佐賀県立博物館。
十字形のプランの展示室が浮いた、斬新かつ明快な名作。
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角度を変えて見ると、かなりダイナミック!
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こちらは佐賀県立図書館。こちらも内田祥哉+第一工房の設計です。
ザ・近代建築ですね。
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こちらは今井兼次の大隈重信記念館
ルドルフ・シュタイナーのゲーテアヌムを彷彿させる建築です。
これらの建築を足早にまわりましたが、
モダニズムとその限界を感じてその先に行こうと試行錯誤するその時代の空気感を、
足早に廻ったからこそ、むしろ感じとることができたように思いました。

ドリアンと漏斗

佐賀は正直、やや地味な印象がありますが(すみません!)
奇抜なデザインの建築がいくつかあります。
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こちらは坂倉準三が設計した体育館。
平面は楕円にイガイガがついたドリアンのようなカタチ。
坂倉準三と言えば、ここで説明するまでもなく、ル・コルビジェの弟子であり、
上野の西洋美術館や鎌倉の神奈川県立美術館のような近代建築を設計した巨匠。
コルビジェがロンシャン教会を設計したように、
坂倉も造形的な奇抜なデザインをしたかったのか???
大いなる期待を抱き、中に入ったのですが・・・・
残念ながら、内部空間からは、訴えかけるものは・・・
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そして、外に出て、正体して全景の写真を撮ろうとした時に、、、
何かやら、センターに気になるものが(?)。
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近寄ってみると、こんなことになっていました!
屋根の雨水は、ここを流れくるのですね。素晴らしい!
是非、雨の日にもう一度来たい建物です。
実は、ここに立ち寄る前に、佐賀空港のそばの民家に立寄ったのですが、
その民家と同じ考え方なのです。
どちらも、有名な建物なのかしれませんが、勉強不足で僕は知りませんでした。
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こちらが、山口家住宅。
この地域でしかほとんど見られない「漏斗造り」の民家です。
重要文化財の住宅ですが、今も山口さんがお住まいですが、
中も拝見させていただきました。
外観だけみるととりわけ特別なものにも見えませんが、、、
中に入ると、とても斬新なことになっていました。
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なんと、屋根のセンターがくぼんでいて、まさに漏斗のように雨水を集め、
この大きな瓦の上を雨水が流れるとこと。
大雨の時が心配ですが、茅葺き屋根なので、雨音は聞こえず、
しみてきた水が常にチョロチョロと流れるとのことです。
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そして、その雨水はこちらに!
おお素晴らしい!ここも、是非、雨の日に再訪したいです!
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この「漏斗造り」の奇抜なデザイン(?)の住宅は、
坂倉準三のドリアンより遥かに昔に建ったもので、
民家は古いものとひとくくりには出来ないですね。。。
ちなみに、佐賀にはもひとつこの地特有の形式「くど造り」というのがあります。
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こちらが、「くど造り」の民家。
左が国の重要文化財の川打家、右が市の重要文化財の森家。
なぜ、森家が格下なのか(?)が気になるところですが、
それはさておき、ななめから見ると二軒ではなく、四軒に見えます(笑)。
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コの字型の平面を持つ不思議なカタチをした民家ですが、
なぜこのようなカタチになったのかは諸説なるようですが、
その理由はハッキリわからないとのこと。
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谷になったところはこのようになっていて、
「山口家住宅」のように雨水が流れる工夫がされています。
雨水をデザインに取り入れた建築と言えば、
林昌二が設計したパレスサイド・ビル(毎日新聞社)が有名ですが、
佐賀のこれらの建物もその名作に負けていませんね。
日本は雨が多いので、雨が降った時に楽しみたいものです。
そんな気分にさせれた建物たちに、立て続けに出会いました。

川下りと鰻@柳川

「大正屋」には、佐賀空港からレンタカーで行ったのですが、
チェックインまで少し時間があるので、
空港から30分ほどの柳川にちょっと立ち寄りました。
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柳川と言えば、川下り。
ただ、川下りとは言うものの、正確にはここは川ではなくお堀。
つまり、水は一方向に流れていないそうです。知らなかった。。。
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船を降りたタイミングで、雅楽の伴奏つき結婚式に向かう船団が・・・
ここの料亭にも行ってみたかったところですが、今回は時間がないのと、
大広間は今は改装中で見れないとのことのなので、また次回のお楽しみに。
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しばらく、待っていましたが、なかなかやって来ないので、望遠で(笑)
雅楽の演奏をする人たちの乗った船の後ろに、新郎新婦の船。
そして、急いで若松屋へ。花より団子ならぬ鰻です(笑)。
なんとなく、鰻と言えば、蒲焼きが食べたい気分でしたが、
やはり折角なので柳川名物「鰻のせいろ蒸し」を注文。
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こちらが「鰻のせいろ蒸し」。
そして、一口食べてみると、、、、、、
予想を遥かに超えた、驚きの美味しさです。久々に感動しました!
鰻は柔らかく、そして芳ばしく美味しいのですが、下のご飯も絶品です。
ほんの2時間程の柳川でしたが、最高のひと時でした。

吉村順三の「大正屋」

久しぶりの休日、佐賀の嬉野温泉、大正屋に行ってきました。
知る人ぞ知る(?)「大正屋」は建築家・吉村順三氏の設計の旅館です。
「匠たちの名旅館」の著者である稲葉さんによると、
京都の俵屋旅館などの吉村さん設計の旅館の中で、
ここが最も設計当初の状態で残っているとのことで、
以前から、一度泊まってみたかった旅館の一つです。
早めにチェックインをして、「水晶の間」「菊の間」など、
泊まる部屋以外も拝見させていただき、離れの衆芳亭へ。
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こちらが、今回泊まった離れの「衆芳亭」。
本間の他に茶室と専用庭のついた「大正屋」の中で最高峰の特別室。
二人で泊まるには、ちょっと広すぎでした(笑)。
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前室から本間越しに庭を見たところ。
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畳から一段下がったところにある座面の低い椅子に座ると、
庭と連続しつつも、畳に座った人とも同じアイレベル。。。
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プライベートの庭に出て、ちょっと散策することもできます。
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こちらの茶室からも、本間とは趣の違った庭の風景が眺められます。
外枠と中桟が同じ太さのいわゆる吉村障子。随所に吉村順三のディールが・・・
確かに、あちらこちらに神が宿っていました(笑)。
あちらこちらの写真を撮っていると、休む暇もなくチェックアウトの時間に。
とても、勉強になりました。

五重塔が見える景色

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次の日の昼、八坂のザ・ソウドウに行きました。
数年前に一度夜に来たことがあるのですが、
今回、予約したのは2階角の個室。
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そこから見える五重塔が見える景色は素晴らしく、
ちょうど雪がちらつき、まさに冬の京の風景でした。

西翁院・澱看席

JIAセミナー解散後、特別公開中の西翁院の澱看席を見学に行きました。
茶人・藤村庸軒の茶室で、師匠の宗旦の三畳敷とよく似ていて、
点前座と客座との境に中柱を立てて仕切壁をつけ、
そこに火灯口をあけて「道安囲」とよばれる構えの名茶室。
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写真撮影はNGなので、こちらは入口からの写真。
たまたま見つけたこちらの特別公開は、なんと13年ぶりののようです。
茶室にご興味のある方は必見です(3月18日までです。)。
澱看の席を見学した後、そこから歩いて茂庵というカフェへ。
その途中にある、大正時代のレトロな街並を横目に吉田山の山頂へ。
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建物も楔をつかった木造の趣のある雰囲気で、今、人気のスポットらしい。
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木々の隙間から京都市内を眺めながら、美味しいケーキを頂きました。
まだまだ行ったことがないところが沢山ありますね。。。。。

樂焼の伝統と今

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翌朝、樂さんのご自宅の横にある樂美術館へ。
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こちらのスペースで、樂さんのお話を聞きました。
庭のあちら側に見えるのがご自宅。
祇園で昼食を済ませて、京都国立近代美術館で樂さんの展覧会、
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展覧会の図録の中で樂さんは次のような文章を書いていました。
初代から二代、三代さらには本阿弥光悦までを「創成期」と捉えて、
その部分を充実させると共に、「今」すなわち現代を「創成期」同様に充実させる。
また、「創成期」と「今」、その間の歴代の作品を伝統と創造の営みとして、
一筋の道のように過去と現代を結ぶ。
それは過去と現在を結ぶ能舞台にかかる橋掛かりのようでもある。
実際の展覧会を訪れると、茶碗にとりわけ詳しくない僕にとっても、
ズラリと並べられると、「不連続の連続」と言われる樂焼が、
どのように引き継がれてきたのかがよくわかる素晴らしいものでした。
一子相伝と言っても古いものを単に引き継がれているのではなく、
もしろ、樂吉左衛門というアーティストの前衛芸術ですね。
こちらの展覧会は2月12日まで京都で開催されていますので、
是非、ご覧になっていただければと思います。
ちなみに、東京国立近代美術館で3月14日〜5月21日で、
同じ展覧会が東京でも開催されるようです。

樂吉左衛門の茶室

私が実行委員をつめるJIA建築セミナーで、樂吉左衛門氏に講演をお願いしました。
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千家十職の樂焼十五代当主の樂吉左衛門氏。
琵琶湖のほとりにある樂さんの茶室で、
その茶室について直接お話を聞く貴重な機会でした。
茶室と言えば、一般的な数寄屋建築をイメージしがちですが、
樂さんがそんな様式にとらわれる茶室をつくるはずもなく、
伝統的なものから、何をもらい、何を変換し、何を捨てるかを真剣に考え、
試行錯誤の結果として、この茶室ができたとのこと。
ちなみに、最初に捨てたのは土だそうです。
茶室は非日常の場所だが、非日常と言ってもそれは精神の非日常であるなど、
とても奥の深い貴重なお話に感服しました。
また、千利休の時代から続く重くのしかかる伝統を継承しつつも、
現代に生きる前衛的なデザインを作ろうとするその姿勢には、
非常に心を打たれました。
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滋賀県の琵琶湖のほとりに建つ佐川美術館。
あちらに浮かぶのが、樂さんがつくった茶室です。
実は、小間を含む、ほとんどの部分は水面の下にあります。
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佐川美術館とその増築部分の茶室の設計者、
竹中工務店の内海さんに茶室をご案内していただきました。
今回は、建築家協会のセミナーということもあり、
特別に小間の中にもあがらせていただきました!感激!
かなりの時間とコストがかかったようですが、
「急かさざること おいとい無きこと ご指導無きこと」
つまり、お金、時間、そして、建主が口出ししないとのことが、
小堀遠州(?)が言ったとされる良いものができる3つの条件だそうですが、
この茶室はその条件を満たしているとのこと。
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樂さんのこだわりで水面すれすれです。
前衛的な茶室ですが、きちんとお点前のできる素晴らしい茶室でした。
見学が終わったあとは近くの温泉宿に泊まり、懇親会。
同じ部屋となった竹中の内海さんとは夜遅くまでお話させていただき、
内海さんにはご迷惑だったかもしれませんが(笑)、
とても勉強になる楽しいひとときを過ごさせていただきました。
どうも有難うございました!

五月晴れの犬島と豊島

三分一と初見先生一行と別れた翌日の朝、船で犬島へ。
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三分一の代表作の犬島精錬所美術館。
さすがは建築学会賞受賞のレベルの高い作品でした。
熱や風と言ったことが注目されるこの建物ですが、
アーティストと建築家の境界のない、
鏡に映り込んだ不思議な光の世界が素晴らしかったです。
その後、家プロジェクトを見て、豊島へ。
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西沢立衛さんが設計した豊島美術館。
鳥のさえずり、風の音など、わずかな音をひろい、
見えないものも館内で拡張されて、自然を感じます。
しばらくしてから、小さな音楽が流れていることに気づいたのですが、、、、
不思議なことに外に出ると聞こえない(?)。
受付で「どこで音楽をかけているのですか?」と聞くと、
音楽はかけていないとのこと。
どうやら遠く離れた街の移動式パン屋さんだったようです(笑)。
内藤礼のアーティスティックな空間でありながらも、
周りのそんなわずかな音までもひろう不思議な空間でした。
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そこから眺めた棚田越しの瀬戸内海。とても美しいですね。

「直島ホール」と「またべい」の見学

遅ればせながら、、、はじめて直島に行ってきました。
直島ホールの設計者、三分一博志氏は大学の研究室の同級生で、
その研究室の恩師である初見先生と「直島ホール」と「またべい」を
見に行くというのが今回の直島視察旅行の主な目的でした。
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直島ではその他にも、家プロジェクト、地中美術館などにも行きましたが、
どれもレベルが高く、とても濃密な時間を過ごすことが出来ました。
三分一と初見先生一行と別れて、直島に一泊することに。
直島と言えば、ベネッセハウスに泊まるのが定石かもしれませんが予約で一杯。
どうせ他のところに泊まるならということで、
ちょっと変わったところで、パオに泊まることに。
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パオはモンゴルの遊牧民の移動式住居なので
本来は海のない草原にあるはずなのですが・・・・・
海沿いのとても不思議な風景ですね。
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パオと言っても現代的なものですが、、、、、
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波の音を聞きながらパオで眠るという不思議な体験ができました。
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月と草間弥生のカボチャ。
行き交う船と、遠くに見える高松の夜景を眺めながらビールを飲む。
これもまた、なかなか良いひと時でした。