• Archive

「俵屋旅館」のおもてなし

「京都迎賓館」見学のために泊まる宿となると、
やはり「極上のおもてなし」の名旅館に泊まろうということになり、
世界中の誰もが絶賛する「俵屋旅館」に泊まることにしました。
「俵屋旅館」は伊藤博文、大隈重信などの明治の偉人から
スピルバーグ、ヒッチコック、米国大統領などなど、
世界中の著名人が泊まったことでも有名ですが、
建築家の間でも高級旅館と言えば必ずこの俵屋が上がります。
これまでに何度も俵屋旅館の話になりますが、
この旅館の批判をする人に出会ったことがありません。
あらゆる分野の超一流の誰もが絶賛するこの旅館は、
何が、どれほど素晴らしいのかを実際に体感したいと、
前々から思っていたのですが・・・・・
はじめて実際にエントランスをくぐり抜けた時、
やや拍子抜けするほど「さりげない」というのが第一印象でした。
そして、帰る時にはまた来たいと思わせるようになっていて、
これぞ「おもてなし」なのかと、その神髄がわかった気がしました。
sDSC03561.jpg
一流ホテルとは違った質素な入り口ですが、
訪れたのが祇園祭りの時期だったので「ハレ」の顔。
sDSC03535.jpg
雁行しながら、先に進むとこちらに。
気張らない入り口ですが、素晴らしい屏風が飾ってあります。
季節によってしつらえは変えているようです。
高級旅館であることを感じさせない優しい雰囲気ですが、
さりげなくおいてあるものは超一流のもの。
暗がりの先に、中庭が見えます。
sDSC03566.jpg
とても落ち着く小さな中庭です。
廊下が迷路のようになっていますが、ここが分岐点になっています。
庭の向こうに見えるのが、
sDSC03608.jpg
こちらの図書スペース。
到着すると、こちらに通されます。
奥の部屋の壁は、和紙向こう側から光を透けさせる洒落たデザイン。
sDSC03620.jpg
こちらがアーネストスタディ。
オーナーのご主人、故アーネスト・サトウのお部屋だったところですが、
今はだれもが使えるパブリックなスペースになっています。
北欧家具と興味深い本がぎっしり。
本屋ではなかなか見かけかないような数寄屋建築の大型本などもあって、
つい自分の世界に入ってします(笑)。
ただ、部屋は広くはないので、他の人がいるとやや気になる距離感?
sDSC03652.jpg
センスの良い小物やお花があちらこちらに飾っています。
「おもてなし」が「サービス」とは違うのは、
そこに報酬が発生しないからだとどこかで聞いたことがあります。
サービス料はあるけど、おもてなし料というものはなく、
そこがホテルと旅館との違いだということらしい。
俵屋の超一流のおもてなしは、さりげない気配りだと思いました。
マニュアル化させれた親切さの押し売りは一流ではないんですね。
とても勉強になりました。
建物は吉村順三の手がけた新館、施工は中村外二工務店と器も一流。
長くなるので、今日はここまで。

「京都迎賓館」見学

一般非公開の「京都迎賓館」の見学に行ってきました。
東京の迎賓館とともに、国賓を接待する大切な場所として、
日本のトップクラスのものが結集した極上の空間となっています。
sDSC03807.jpg
正面玄関から入ると日本庭園を囲むように回廊があります。
池に浮かぶ石と稲穂をしばらく見入ってしまいます。
sDSC03794.jpg
奥に見える廊橋からの風景は素晴らしいのですが、
そこからの撮影はNG。
sDSC03862.jpg
こちらの和船で、船遊びができるそうです。
乗せていたただきたいところですが、勿論NG。
sDSC03786.jpg
京都迎賓館の中で最も大きな「藤の間」。
左側に能舞台があります。
sDSC03801.jpg
こちらが舞台扉の截金(きりかね)。
テレビなどでもよく紹介される人間国宝の故、江里佐代子氏の作品。
実物を是非、拝見したかったものでしたが、
あまりの完璧さ故にか、意外とその凄さがわかりませんでした。。。。
残念ながら、僕はまだまだ見る目がないようです(笑)。
sDSC03782.jpg
こちらの天井は、様々なシチュエーションに対応できる光天井。
なんとも凄いことになっています。
sDSC03836.jpg
こちらは畳が敷き詰められてた純和風の「桐の間」の廊下。
写真で見ると一般的な日本の寸法体系に感じられると思いますが、
実際はかなり大きな空間です。
日本的な空間に見えるためには単なる部材寸法というより、
縦横のプロポーションとそれに伴った部材の適切な寸法が重要なんですね。
sDSC03823.jpg
そして、こちらが「桐の間」。
全長12メートルの漆の一枚仕上げの座卓です。
これは圧巻です!
京都迎賓館の建物自体は鉄筋コンクリート造の建物ですが、
数寄屋大工の最高峰として知られる二つの工務店、
安井杢と中村外二が内装などで関わっています。
sDSC03856.jpg
土庇を支える柱は石の微妙な凹凸にあわせて木を刻んでいたり、
床は修学院離宮を思い出させる一二三石など、
日本の伝統を感じさせるディテールが随所に感じられますね。
今、日本の伝統的な空間の最高峰は恐らくここだと思いますが、
このような場に実際に身を置くことができ、とても良い体験させて頂きました。
一度で良いので、ここで極上のおもてなしをしていただきたいですね(笑)。

続・高知建築視察

高知3日目は室戸岬まで行ってきました。
足摺岬にある故・林雅子さんの「海のギャラリー」と、
室戸岬方面の集落のどちらに行くべきか悩んだ末、室戸岬へ。
sDSC00454.jpg
早朝、高知市内の稱名寺本堂へ。
土佐派の建築家、山本長水氏の設計です。
その後、桂浜、龍馬記念館に立寄り、一路室戸岬へ。
sDSC00486.jpg
途中で岩崎弥太郎の生まれた町、安芸市にも立寄りました。
こちらはその集落で見かけた美しい塀。
sDSC00510.jpg
こちらは、山本長水氏設計の高知県立中芸高校格技場。
到着が昼休み時間にかかってしまいましたが、
丁寧にご案内して頂きました。
sDSC00512.jpg
この建物は建築学会賞受賞作品の名建築ですが、
残念ながら、今は剣道部も柔道部もなく、
今はあまり使われてないようです。。。。。。
sDSC00542.jpg
昼過ぎに、室戸岬に到着。
灯台越しに太平洋を望めます。海は広いです!
sDSC00606.jpg
そして、吉良川町へ。
こんな美しい建物もありますが、
土佐漆喰と水切り瓦、いしぐろの町並みで、
重要伝統的建造物群保存地区に指定されています。
sDSC00577.jpg
この塀も、なんて美しいのでしょう!
sDSC00557.jpg
別のところにやや崩れていたところがありました。
石の切断面を表面に使っているんですね。。。
これは素晴らしい!
sDSC00586.jpg
その後、土佐漆喰の壁に土佐独特の水切り瓦の付いた喫茶店へ。
sDSC00588.jpg
ここは宿泊施設もあるそうです。
質素ながらとても落ち着いた雰囲気です。
sDSC00603.jpg
喫茶店のマスターと話し込んでしまって・・・
飛行機が乗り遅れそうになりましたが、無事東京へ。
充実した高知建築視察でした。

高知建築視察

今回の高知は堀部さんに竹林寺を案内して頂くのがメインでしたが、
話題の建築を見学してきました。
sDSC00287.jpg
まずは、竹林寺に隣接する内藤廣氏設計の牧野富太郎記念館
是非、ここには来てみたいと以前から思っていましたが、
やはり実際にその場に身を置いてみると、
離れるのが惜しくなるような素晴らしい空間でした。
sDSC00268.jpg
展示空間の尾根に鉄骨の美しい曲線を描き、
それに寄り添うように木架構の屋根をつくっています。
sDSC00276.jpg
傾斜に馴染むようにその鉄骨が地形を包み込んでいます。
素晴らしい!
sDSC00435.jpg
こちらの高知駅も内藤さんの設計。
鉄骨と木造のハイブリットな構造デザインがいいですね。
車で高知市内から2時間程のところにある檮原町に行ってきました。
隈さんの建築がたくさんあります。
sDSC00353.jpg
こちらはホテルと大浴場を繋ぐブリッジでもある雲の上ギャラリー。
日本の伝統技術をストレートに表現したデザイン。
この分かり易さが、隈さんの良さなんでしょうね。
sDSC00382.jpg
こちらは檮原町役場。
行ったのが日曜でしたが、中を見学させて頂きました。
このざっくりとした木架構。潔いです。。。。。
sDSC00400.jpg
そして、マルシェ・ユスハラでお茶を。
ファサードの茅の使い方がとても斬新。
sDSC00409.jpg
そして、高知市内に戻って「沢田マンション」へ。
セルフビルドの建築として有名な集合住宅。
通称「沢マン」の書籍はいくつか出ていますが、
沢田マンション超一級資料 世界最強のセルフビルド建築探訪』は、
大学の初見研究室の後輩、加賀谷哲朗氏の著書。

高知、竹林寺の見学

高知、竹林寺に行ってきました。
四国霊場第三十一番札所のお寺で、
納骨堂が今年、竣工しました。
その設計をされた建築家の堀部安嗣さんに、
竹林寺を案内して頂きました。
sDSC00310.jpg
この美しい石畳を登った先に、本殿があります。
雨に濡れた石がとても美しく、
しっとりとしていて風情がありました。
sDSC00318.jpg
こちらが納骨堂
既存の木を避けるような控えめなアプローチ。
そして軒の高さを低く抑えられいているので、
おもわず首を垂れて内部に入ります。
堀部さんに設計哲学を解説していただきました。
sDSC00303.jpg
四国八十八カ所霊場の寺ということもあって、境内も立派です。
客殿でいろいろなお話を聞かせて頂いた後、お店へ移動。
夜遅くまで堀部さんとご一緒させて頂きました。
堀部さん、竹林寺の方々、どうも有り難うございました。

レーモンドの新スタジオ@軽井沢

東京は例年以上に暑い日が続きますね。
ということで、避暑も兼ねて軽井沢に行ってきました。
sDSC05786.jpg
こちらはdocomomoにも選ばれている「軽井沢の新スタジオ」。
アントニン・レーモンドが晩年に設計した建物です。
以前から、見学させて頂きたかった建物ですが、
念願かなって、今回初めて拝見させて頂きました。
レーモンド事務所の元所員だった北澤興一さんが所有されています。
ちょうど茅葺き屋根が使えない法規ができた1962年の竣工で、
ガルバリュウーム鋼板を茅の下に敷いて許可が降ろしたそうです。
茅は一度やり変えたそうですが、やはり少し無理があるそうで、
やむなく数年前に茅をとってしまったそうです。
sDSC05781.jpg
不思議な形をした屋根のトップは、暖炉の火が茅に移らないように、
曲った部分に雨水がたまるようになっているとのこと。
sDSC05801.jpg
よりによってこの大事な時に、、、、、
カメラが壊れてしまいました。特に広角側が・・・・最悪!
でも、空間は最高でした。
sDSC05769.jpg
中心の暖炉は構造体になっていて、
その上部に細い丸太が架かっています。
sDSC05766.jpg
スパンがとんでいるからと言って太い材を使うのは野暮とのこと。
確かに、その組み合わせ方がとても美しいです。
sDSC05793.jpg
壁がラーチ合板。レーモンドは好んで使ったそうです。
安くて丈夫で、枠材もラーチにすると一体感を増し、
経年変化で色が美しく濃くなるのが好きだったようです。
sDSC05772.jpg
いぐさの縄で編んだ椅子は長持ちするそうです。
家具はすべてレーモンドの作品です。
ピントがボケていますが、
左から北澤さんと建築家と宮さん、阿部勤さん。
レーモンドが設計した住宅には、
他のデザイナーの家具は一切置かせなかったとのこと。
時々、自分が設計した住宅に行って、自分が設計したもの以外は、
所員にすべて外に出すように指示を出していたらしい(汗)。
さすが、巨匠です!
sDSC05749.jpg
奥の主寝室の天井は、とても複雑な接合になっています。
いろいろと質問するさせていただくと、
北澤さんにとってもお気に入りのところだそうで、
熱く接合部について語っていただきました。
緑の中の佇まい、架構、簡素なインテリアなど、
50年の時を超えた素晴らしい建築でした。

雨の「桂」

今回の旅行の目的は、そもそも「桂離宮」。
現在進行中のサンクトペテルブルグのプロジェクトで、
桂離宮と同じぐらいの大きさの池があり、
その大きさと建物の配置を参考にするための訪問です。
桂4-s.jpg
「桂」もあいにくの雨でしたが、気は持ちようです。
雨の日は緑が映えますし、石の色がはっきり見えます。
しかも、雨の日は晴れた日よりもコントラストが落ちるので、
外の明るいところと室内の暗いところの両方を写したい場合は、
むしろ雨の日が良いくらいです。
DSC01655-s.jpg
池越しに見る松琴亭。
DSC01713-s.jpg
石畳の先に古書院。雨に濡れて石の色がはっきり見えます。
DSC01715-s.jpg


傘をさしていると、自然と下を見る時間が長くなりますが、
一つ一つの石にも趣きがありますね。
DSC01733-s.jpg
床のレベルが高いので、石の大きさがどんどん大きくなっていきます。
よく見ると最後の一段はかなり大きな石です。
桂-s.jpg
雨の日は緑が瑞々しくて、美しいですね。
桂離宮の素晴らしさは、
日本庭園、建物配置から欄間、取手のディテールまで、
すべてにおいて密度が高いということがあると思いますが、
今回は庭園と建物との関係が特に見たかったこともあり、
池に沿って起伏のある小道を歩いていくにつれ
次々と展開する風景に改めて大きな感動がありました。
桂離宮はドイツの建築家、ブルーノタウトに再認識されるまで、
しばらくの間忘れられていたという話がありますが、
日本人としては何とも恥ずかしい話です。
時代によって変わる評価基準というものはあてにならないですね。

雨の「修学院離宮」

久しぶりの「修学院離宮」も、あいにくの雨。
事前に予約が必要な修学院離宮は、
晴れるかどうかは運まかせ。
DSC01556-s.jpg
最も高い所にある上の茶屋「隣雲亭」から京都が一望できます。
近くの山々は霧がかかって幻想的な風景でした。
DSC01550-s.jpg
上の茶屋の隣雲亭と言えば「一二三石」などで有名ですが、
DSC01558-s.jpg
雨だからこそ気づいたかもしれないこちらの樋。
建物から遠く離れた小枝で支え、雨水を落としています。
メンテの行き届いた修学院離宮だからこそできるワザとは言え、目から鱗。
雨樋のデザインは普段の設計でも苦労するところです。
DSC01571-s.jpg
軒がしっかり出ているということもありますが、
雨をものともせずにしっかり開いている佇まいが良いですね。
窓の向こうに落ちる雨音が安らぎます。
DSC01577-s.jpg
日本は雨が多く、湿度が高く、しかも暑い。
雨をどうデザインに取り入れるかが重要です。
時代を超えて現存する名作と言われる建物は、
現代のデザインのヒントになるものが沢山潜んでいると思いました。

京都食べ歩き

夕暮れ時、鴨川の川床のカフェで、まずはビールを一杯。
その後、歩いて「割烹たいら」 という新しくできたお店へ。
DSC01467-s.jpg
カウンターが8席のみの小さなお店です。
料理はとても上品で美味しく、好印象。
DSC01474-s.jpg
3件目は祇園のNITIというバーへ。
堀木エリ子さんの和紙を内装に使ったシルエットの美しい空間です。
そして、ウエスティンホテルに戻り、バーでカクテルを一杯。
DSC01599-s.jpg
次の日の昼は、白川沿いのレストランへ。
itoh1-s.jpg
白川と木造の古い建物。それだけで、絵になります。
川のせせらぎを聞きながら、神戸牛を使った料理に舌鼓。
心安らぐひとときでした。
DSC01616-s.jpg
2階は瓦屋根の連なりが美しい、1階と違った趣き。
DSC01796-s.jpg
そして、締めは八坂の塔の膝下、「東山艸堂」。
広大な敷地に建つ建物は、日本画壇の巨匠、竹内栖鳳の私邸。
sodoh-s.jpg
古さを生かしたモダンな空間で、
緑が美しい昼間にもう一度行ってみたいお店です。

村野藤吾の「佳水園」に宿泊

村野藤吾氏が設計した「佳水園」に泊まりました。
京都、蹴上の都ホテルの中にあります。
今はウェスティン都ホテル京都という名前になってしまい、
日本人としてはちょっと寂しいですね。
DSC01504-s.jpg
佳水園」はホテルの一角にある数奇屋建築。
こちらが、その入り口の門。
DSC01506-s.jpg
こちらの門をくぐり抜けると・・・
DSC01508-s.jpg
雰囲気が徐々に変わっていきます。
敷き石も、少しづつきちんとしてきます。
DSC01500-s.jpg
基本的には、この庭に面して客室が配置されています。
客室数20室のこじんまりした建物で、低く抑えた庇が印象的。
昭和の数奇屋建築の名作です。
DSC01434-s.jpg
桂水園で最も素晴らしい空間は、このロビーではないでしょうか。
低い天井のこじんまりした空間ですが、とても落ち着きます。
DSC01435-s.jpg
庭に面して雁行した形状になっています。
DSC01503-s.jpg
ホテルなので基本的には共用部は土足ですが、
落ち着いた和のエッセンスが感じられます。
DSC01498-s.jpg
廊下は暗く、狭く、天井が低い。
だからこそ、外の風景が広く、美しく見えるのでしょう。
DSC01417-s.jpg
客室はこのような感じです。
俵屋のような高級旅館をイメージしていると、ちょっといまひとつですね。
お値段からすると仕方がないのですが、
あるいは、村野藤吾の名作ゆえに手がいれられないのかわかりませんが、
水周りや白い蛍光灯の照明など、
時代と共に手をいてれいった方が良いように思いました。