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Hokusai 帰国

Hokusai – beyond the Great Wave が大英博物館で行われ、
記録的な入場者数だったとか。海外でも葛飾北斎は大人気のようですね。
その展覧会が日本にも来るということで楽しみにしていましたが、
東京には来ないとのことで、わざわざ大阪、あべのハルカスに行ってきました。
北斎の絵の斬新な構図とデフォルメに惹かれます。
それらは、よく言われていることではありますが・・・・
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日本展のタイトルは「北斎 – 富士を超えて」。
タイトルの通り、富嶽三十六景以降、つまり後半のものが多く展示されていました。
大英博物館の展覧会ですから、大英博物館所蔵のものが多いのは当然ですが、
欧米の国々のもののが多いことに驚きました。
版画以外の肉筆画も多いので、
一点しかないものがかなり海外に流れているということですね。
明治時代になって日本文化が過小評価されて、
大量に浮世絵が海外に流失したものがあることは知っていましたが、
その量はかなりのものかもしれませんね。
外国から評価されないと、なかなか自国の素晴らしさには気づかないものですが、
絵画と違って、建築や都市は一度、壊したら元に戻らないので、
少しでも早くにその素晴らしさに気づかねばいけませんね。
民家や木造の街並など、明治維新以降から戦後にかけて、
もうすでにかなりのものを失ってしまいましたが・・・
ところで、とても興味深い映像を会場で見ました。
世界で最も有名な絵と言われるあの有名なthe Great Wave、
富嶽三十六景「神奈川沖浪裏」のような写真を撮ろうとすると、
海に入って構図は同じようにできるのはさておき、
あの独特な波しぶきはシャッタースピードを1/5000しないといけないとのこと。
天才北斎と言え、1/5000の世界は見えていないと思いますので、
想像で現実の世界を表現しているのですね。
改めて、北斎の凄さに驚いてしまいます。

「鎌倉長谷の家」久しぶりの訪問

昨年竣工した「鎌倉長谷の家」に久しぶりに行ってきました。
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鎌倉長谷の山麓に建つ住宅です。
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南からの採光と北の眺望。
その二つの軸を結んでできたくびれた家型のボリュームと、
敷地にあわせた家形のボリュームを組み合わせることで
魅力ある内部空間を作ろうという試み。
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南の窓からは採光と庭を眺めるたことができます。
畳敷きのくつろぎエリアと右奥にキッチン、
その間のちょっとしたスペースが子供の勉強スペース。
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障子越しに見える緑の多い街並み。
眺めているだけで安らぎます。
欄干に腰掛けてビールを飲みながら鎌倉の花火を眺められます。
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垂木の構造が美しい天井の仕上げとなっています。
吊り方に工夫を凝らした照明器具と、
ウォールナットの一枚板で作ったダイニングテーブルが
空間のアクセントになっています。
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空間を分節する壁(二つのブロックの境界)の厚さは一様ではなく、
厚みある境界をまたぐように場をつくり、建物全体が緩くつながっていきます。
用途で空間を分節するのではなく、
すなわちカタチと機能を明快に一致させるのではなく、
緩やかな境界が、緩やかにいろいろな居場所をつなぐといった考え方は、
成瀬の家赤塚の家などに通じるもの。
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階段ホール側からダイニングを見たところ。彫塑的なオブジェのような境界壁。
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リビング横の階段スペースを上がると、そこは天井が低く抑えられた子供の楽園。
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子供の楽園からの見返し。
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一階の寝室からは和の庭が眺められます。
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ご主人の趣味はサーフィン。朝出勤前に波に乗るという鎌倉ならではライフスタイル。
サーフィンから帰ってきたら、屋根付きのバスコートでシャワーを浴びてから、
そのままバスルームに入ります。
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1階には奥様のネイルサロン。そこからも山が眺められます。
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夜になると、また違った風景に。
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陰影が梁を浮かび上がらせて空間の奥行きも強調するシリウス戸恒氏による照明計画。
竣工して一年程ですが、すっかり暮らしが馴染んでいました。

「松濤の家」祝!地鎮祭

「松濤の家」の地鎮祭に行ってきました。
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この住宅は不特定多数のための高級賃貸の戸建てなので、
住み手が決まっていつもとは違った設計の難しさがありました。
茶室の解体と植栽の大移動を終え、いよいよ着工です。
擁壁解体、山止め、杭工事とまだまだ地上に出てきませんが、
来年の夏の竣工が待ち遠しいです。

イタリアとの国境の街、マントン

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カップマルタンからさらに東に行くとイタリアはすぐそこ。
その手前にカラフルな街、マントンがあります。
大成建設在籍中にニースのプロジェクトがあって、
その時の上司の野呂さん(前の設計本部長)が、
コートダジュールのイチオシの街はマントンと言っていたのが懐かしい。
ここマントンに行くのを夢見て頑張っていましたが・・・
そのプロジェクトはなくなり、結局、行くこともなかったのですが、
それから20年、いつか行きたいとずっと思っていました。
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確かにイタリアの近くということもあって、どことなくフランスとは違う街並みです。
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どこを切り取っても絵になります。
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急な斜面に連なるように建物が建っていて、
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立体的な迷路です。
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家の中なのか、外なのか境界がはっきりしません。
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建物の隙間からは、真っ青な海と空。本当に晴れてて良かったです。
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また、ついのんびりしてしまいました。。。
飛行機に乗り遅れないように、大急ぎでニース空港へ。
今回は、薄暗い早朝に起きて日没まで車で廻るハードなスケジュールでしたが、
それ以上に移動距離が6日間で1800kmとかなりのものでした。。。
本来なら3週間くらいでのんびり廻ると、優雅なバカンスになったことでしょう。
今度はそんなのんびりした旅をしたいものですが、、、無理ですね(笑)。

カップマルタンのアイリーン

bunkamura ル・シネマで14日から上映されますが、
その舞台となっているのが、ここカップマルタン。
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ニース同様、砂浜ではなく、砂利の浜です。
この上に寝ると、とても痛そうですね。
海のそば、写真中央に小さく見える白い小さなたてものが、
アイリーン・グレイの別荘、E.1027です。
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その拡大がこちら。
右上にコルビュジェの休暇小屋も木々の間から見えます。
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アイリーン・グレイの別荘は数年前に公開(事前に予約が必要)されたばかりなので、
中に入ったことがある人は少ないのではないでしょうか?
ガイドさんの説明によると、殺人事件があった後、ずっと廃屋になっていて、
アイリーンを激怒させたコルビジェのあの有名な落書きがあったおかげで、
フランス政府から補助が出て、今のように見学できるように補修されたとか。
なんとも皮肉な話ですが、コルビュジェのおかげのようです(笑)。
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コルビジェが嫉妬した(?)センスの良いインテリア。
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右にちらっと見えるのが、コルビュジェの絵(有名な落書き?)。
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海側はガラス張り。バルコニーと日よけもきちんとついています。
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とても気持ちよさそうなハンモック。
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その先は絶景です。
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庭もセンス良くタイルを貼り分けられています。
映画「ル・コルビュジエとアイリーン 追憶のヴィラ」公開が楽しみですね。

絶景のカップマルタン

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日本人の建築家にとってはカップマルタンと言えば、
このコルビュジェの休暇小屋。
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海からの距離もほど良く、窓からは青い海、
そして、その先にモナコが見える最高の立地に建っています。
ちなみに、ここカップマルタンはコルビュジェが海水浴中、
心臓発作になって亡くなった場所でもあります。
このあたりは急斜沿いに別荘がぎっしり建っていて、
その一番上のあたりにレ・ドゥー・フレールというレストランがあります。
ということで、昼食はそちらのレストランへ。
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見て下さい!この風景!
運良く、レストランの最前列が空いていました。
この絶景を眺めながらの昼食。最高です。
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少しズームインすると、こんな感じ。
奥の半島のあたりがモナコ公国の宮殿があるあたり。
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昼食後、街をぐるりと散歩しましたが、
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どこを切り取っても絵になる風景。
カップマルタンはコルビュジェの休暇小屋だけではありません!

ラチュルビの猫

南仏は観光客が多いからか、猫は人に慣れているようです。
とても人なつっこいです。
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ラチュルビでモナコの夜景を見ようと散歩していると、
トボトボ猫が後ろをついてきます。。。
立ち止まって、カメラを向けると・・・・
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後ろを、向いて・・・・
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カメラのレンズを拭いてくれます(笑)。
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そして、気になるのか、ちらっとこちらを見て、、、、
こちらが歩き出すと、また後ろについてきます。
これを何度も、何度も繰り返し、、、、
後ろ髪を引かれつつ、振り払ってしまいました。
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すると、しょぼ〜んと、こんな寂しげな表情。あら、可哀想。
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その先で、一所懸命、写真を撮る僕がいるのでした(笑)。

コートダジュールの鷲の巣村

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ニースからモナコ方面へ行く途中、 右側に絶景が次々現れます。。。。
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この半島には大富豪ロス・チャイルドの旧邸宅があります。
ヨーロッパ(世界中?)の大富豪が、このあたりに別荘を持ちたがる理由がわかります。
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そして、しばらく行くと、こちらが海と山の間に浮かぶ村、エズが見えてきました。
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絶景です!
ただ、遊園地のように入場料を払わないと、ここまで来れません。
観光化されてしまっているのがやや残念ですね。
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崖っぷちの絶景ポイントにいくつかホテルがありますが、かなりお高いです。
このあたりでは、お金を出せば(一泊150万円くらいのところもゴロゴロ(?)ある感じ)、
素晴らしいところはいくらでもあるのですが、コスパを考えると、
泊まるところがなかなか見つからず、、、、
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悩みに悩んで泊まったのは、エズの隣りの小さな村、ラ・チュルビ、
ミシュラン星付きレストランのシェフ経営する宿、オステルリー ジェローム。
コメントを見ると賛否両論でしたが、たまたま空室が出たのでそこに泊まることに。
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部屋からの風景が素晴らしく、夕焼けに染まる空と地中海。客室は◎。
そして、ウリの食事はと言いますと・・・・
夕食は、随分前からすでに予約で一杯だったのですが、
当日、無理を言って、割り込ませていただきました。。。
値段を考えると、まあいいかなというくらいの評価で、
わざわざ日本から行くところではないように思いました。
期待が大き過ぎたかもしれませんね。。。
むしろ、日本のフレンチはレベルが高い(お値段も高いけど・・)んだなあと改めて思いました。
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そして、次の日の朝、ホテルからほんの少し歩いて展望台へ。
手前がモナコ、その先に突き出た半島がカップマルタン。その先は、イタリア、
つまり、ここからは3ヶ国が望める絶景ポイントです。
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眼下にモナコの別荘群が・・・・ プールがあって屋根は赤い瓦。
現代建築が入り込む余地は全くなさそうです(笑)。

ヴァンスのマチス

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プロヴァンスとはまた違った雰囲気のコトダジュールの街、ヴァンス。
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この丘の中腹にマチスがデザインした礼拝堂があります。
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真白のインテリアはステンドグラスを通した色を落とし込むため。画家マチスらしい発想。
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窓から見えるヴァンスの街並。その向こうに地中海。
レマン湖は雨でしたが(涙)、コートダジュールは完璧です!
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ランチは細い路地沿いのテラス席のあるレストラン、ラ・リトットで。
コート・ダジュールは明るいですね。
子供が目の前を駆けるけるのも絵になります。
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洗濯物も絵になります。
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太陽の光が強いので、光と影がくっきり。
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建物と建物間から見える風景も美しい。
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猫も観光客になれているので全く動じず、むしろカメラの前に(笑)。

念願のルトロネ

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今回の旅の目的地、ルトロネの修道院。
一台も対向車が来ない山奥の細い道を走り続けてようやくたどり着き、
思わず息を呑み、、、、カメラを構えてしまう。
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辺境の地であることに加えて、夕方に着いたこともあり、
人はほとんどいない静かなルトロネの修道院。
闇に包まれた礼拝堂に夕方の横から光が差し込み、神秘的。
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そして、完璧なプロポーションに、また息を呑む。
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「粗い石」の細部にまで神が宿っています。
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礼拝堂を抜けた先に回廊があり、光が人をいざないます。
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写真では何度も見たことがある回廊の柱。実際に見て、感激!
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敷地の起伏にあわせて回廊も起伏があり、空間に変化を与えています。
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石の表情が光のあたり方で大きく変わります。
ロマネスクの修道院をこれまで見てきましたが、
ここルトロネが最も簡素で、そして最も完璧です。
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隙間から見える風景も完璧です。
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上に上がると回廊が見渡せます。
ルトロネをほぼ独占。閉まる直前に来て良かったです。
サントロフィーヌはギリギリ見れなかったけど・・・・(涙)。
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ここ数日、いくつも修道院を見学しましたが、ルトロネが最後で大正解。
たくさん見てきたけど、ルトロネは圧倒されました。
勿論、見る視点を変えれば、それぞれに良いところはあると思いますが、
完璧な造形という点は群を抜いているように思います。
建築家同士でもよく話にあがるルトロネの修道院。
やはり、ここに来なければこの空気感は感じられないと思いました。